第9話 お父さんでもトゥシューズ

トゥシューズはみんなの憧れ。
大人になってからバレエを始めた人も、1年くらい続けると「ポアント・レッスン」の文字が視界に入ってきて、ちょっと履いてみようかな―と。

かつて某スタジオの先生は、「トゥシューズを履いて歩くだけなら、そこら辺を歩いているお父さんでもできる!」と言っていました。先生はおそらく、トゥシューズは、履くことではなく履きこなすことが難しいと言いたかったので、実際にバレエ経験のないお父さんに履かせたら、どうなるのか? かなり愉快な想像です。

確かに履くだけなら初心者でもできる―この罠に私は引っかかりました。
バレエを始めて1年くらい経っていたでしょうか、私は、トゥシューズを履いて舞台で踊りたい!と思いました。
青山ヘルシィスタジオには発表会はありましたが、バレエは子供クラスだけでしたので、大人でも出してくれそうなスタジオを探し、家から2駅ほど先に、ハードルの低そうな個人のお教室を見つけました。発表会がもうすぐあるようだったので、即、入会し、「トゥシューズ、履けま~す♪」と言いきって、トゥシューズを買いに行き、強引に履いて発表会に出てしまったという、全国のバレエ教師が聞いたらひっくり返るようなことをしてしまいました。いくらハードルの低いお教室でも、先生は見破っていたでしょうけれどね。

確かに、履くだけなら、履けます。誰でも立てるようにトゥシューズはできています。
案外、怪我もしないし、写真も一丁前に撮れています。
でも、よい大人の皆さんは、絶対に真似をしないでください。

私は、悪いクセがついてしまいました。
その後、あちこちで受けた「ポアント・レッスン」は、ひたすらそのクセを矯正するためだったような気がします。
どうしても抜けなかったのは、ピルエットを回るとき、足を突き立ててから回ってしまうことでした。

なので、ポアントは、是非、先生の指導の下で履いてください。
今は、多くのスタジオに「大人からのポアント」クラスがありますので、そちらをご利用ください。