第13話 続・バブルの恩恵

バブル時代、まだ薄給だった私は、利息が高くても貯蓄をするほど給料もなく、株を買うでもなく、ディスコに行くでもなく、恩恵というものをほとんど受けませんでした。
でも、今思うと、ダンスに出会えたのがバブルの恩恵です。

製紙会社に入社して1年経とうとする頃、会社の送別会で、私は青山ベルコモンズを訪れました。
5階にあった中華料理のお店で、大きなお皿に盛られた、鯉だったか、仔豚だったか、何かの生物の丸焼きをついばみ、豪勢な料理をたらふく食べて、紹興酒桂花陳酒にヘベレケになった私は、入口で、そのビルのテナントのパンフレットを手あたりしだい掴んで帰ってきたようです。

その中にあった、ピンク色のレオタードを着た女性の印刷されたパンフレット。
青山ヘルシィスタジオ―と書いてありました。それが私の、夢のお城!?
お城には、ジャズダンス、エアロビクス、モダンダンス、ヨガ、パントマイム・・・、あらゆるダンスのクラスがありました。何より魅力だったのは、共通チケット制。
ジャズダンスとエアロビクス、そしてクラシックバレエが同じチケットで受けられるとのことです。チケット制というのも初めて聞きましたが、流行のジャズダンスとエアロビクスのどちらも受けられる共通チケットというのは素敵なアイデアに思えました。ちなみにバレエは、この段階では視野に入っていませんでした。

しかし、未知の世界に踏み込むまで、さらに数か月。レオタードを買いに行くのにも勇気を要し、入会したのは8月でした。レオタードは光沢のあるショッキングピンク。当時最先端のハイレグにしなかったのは、どんな下着を着けたらいいか分からなかったからです(笑)。

私のダンス・バブルの幕開けでした!