第14話 バブルのバレリーナ

青山ヘルシィスタジオに入会して1年経たない頃、某ファッション誌に、「バレエ初心者特別レッスンご招待(正確な企画名は覚えていません)」のような記事を見つけました。
申し込んでみたら、みごと当選。ルンルン気分(当時流行語)で指定された場所に行きました。

青山は骨董通り沿いの、2階建ての美しい建物の屋根の上に、どんなポーズかは忘れてしまいましたが、白いバレリーナ像が舞っていました。
ベルコモンズも、外階段からアクセスできるテラスや、店内がぐるりと見渡せるシースルーのエレベーターなど、手の込んだ造りでしたが、所詮複合ビル。でも、この建物はバレエのために建てられたのよ―と、その像が高らかに主張しているようにも見えました。
中には、ヨーロッパ風の窓から明るい光が射しこんでおり、広いスペースは晩餐会を待つお城のようでした。

招待された読者は4、50人くらい。着替えて集まった人たちの格好は独創的でした。
網タイツの人。トゥシューズを履いてリボンを足首の前で蝶結びしていた人。
当時、大人からバレエを始める発想が殆どなかったことを考えると、仕方のないことです。
大人のための入門書も、これといった情報源もなく、何を着ればいいのか分からなかったんです。
日本中のオシャレをリードしていたファッション誌の企画ということもあったのかもしれません。プレーンなレオタードにピンクタイツを素直に身につけるなど、オシャレ精神に反していたのかも!?
ともあれ、皆、自分なりのバレエのイメージを描いて、お金をはたいちゃったんだと思います。

先生はMバレエ団のバレエミストレス、それにMバレエ団の現役ソリスト2人のお手本つきという、豪華レッスン。先生は、トゥシューズを買ってきてしまった人に、危ないから脱ぐように、優しくおっしゃってクラスが始まりました。

その企画は、そのお城で、大人初心者向けクラスをオープンするための宣伝でした。私も、オープン後1、2回、都合をつけてレッスンを受けに行った記憶があります。

でも、バブルがはじけるころ、もしかしたらそれより前に、そのお城は取り壊されることになり、そこに、今では砦のように頑強なビルが建っています。

あ~(涙)。
それにしても、あの、屋根の上にあったバレリーナ像は、どなたか有名な彫刻家さんが、誰か有名なバレリーナをモデルとして作ったのでしょうか。
今、どこかの博物館に展示されているのでしょうか?
それとも王子様の来るのを待ちながら、どこかで眠っているのでしょうか?

 

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