第25話 ピンクタイツとシニヨン

私の家の近くにはプレステイジャスなバレエ教室がいくつかあって、電車を使って通ってくる子も多いようです。

学生時代、まだバレエというものに馴染のなかった私にとって、この少女たちは謎の存在でした。
一様に髪をお団子にきれいに結い上げ、日本人離れした美しい脚に、一人残らずピンク色のタイツを纏っていました。この少女たちが、ひと塊になって、楽しそうにどこかに向かっていく。いったい、この子たちはどこに行くのだろうと思いを巡らせていました。
きりりと髪を結った顔はそっくりに見えて、皆、ファミリーなのか、そういう信条の団体があるのか、そもそもあのタイツは何なんだろう―と。

その謎が解けたのは、自分がバレエを始めてすぐでした。
でも、あのすらりとした脚に履かれていたピンクのタイツが印象に強すぎて、O脚の自分の脚に同じピンクタイツをまとって鏡に向き合うことが、どうしてもできませんでした。

レオタードも、最初は着ていましたが、トイレに入るたびに素っ裸になるのが情けなくて・・・。カップ付き機能性インナーが登場して以来、レオタードは着なくなりました。トイレ、快適になりました(笑)。

シニヨンは、私が一番重宝した "アイテム" です。
ワンレン、ソバージュ全盛期時代。まとめ髪の女子は、航空業界か病院くらいにしか見られませんでした。私もストレート・ロングでした。
ところが、シニヨンにしてみると、さっぱりとして気分がいいんですね。レッスンのときだけでなく、毎日の生活でも気持ちにスイッチが入る―みたいな。
なので、バレエに行かない日も、シニヨンや編み込みにして、リボンやバレッタなどのアクセサリをつけて楽しんでいました。やがて周りの女子に感染し始め、職場でも新しいヘアアレンジが話題になり、パートのおばちゃんまで「似合う~?」といいながら編み込みを作って来たことがあります。