第73話 先生とどこまでも♡

久々に趣味三昧の週末の予定でしたが、台風のおかげで自宅軟禁になりそうです。

AEDダンススタジオも、オープン以来、嵐でも休むことがなかったと言われていましたが(大雪のときは、途中から休講になりました)、さすがに電車が止まるとなると終日お休みだそうです。

お正月も働いていた先生方、ゆっくりお休みください。

 

さて、休講だけでなく、代行にはいつも、がっかりするものです。

 

ジャズダンスの場合、第71話にも書いたように先生によって内容が大きく異なることがあるので、代行情報を見逃してスタジオに行ってしまうと、まるっきり違うレッスンが始まってしまって、悲劇の90分になることも大いにあり得ます。大好きな先生と仲間うちでLINE交換し、代行とともに集団移動…という話も聞いたことがあります。

 

バレエは、多少の違いはあるとしても、先生が変わってもレッスンの「あらすじ」は同じです。特に先生の所属団体が同じであれば、殆ど同じレッスンが期待できます。

それなのに、先生が変わると生徒には一大事なのです。

 

青山ヘルシィスタジオでは、Mバレエ団のソリストをつとめていた先生が2人で週5コマ(+子供クラス)を教えてました。その1人がルシーニュ先生でしたが、年に数回ある舞台のときはリハーサル段階から代行を立てなければならず、携帯電話やメールのない時代には大変な手間だったことでしょう。

 

ヘルシィスタジオのお姐様方は、代行にいらっしゃる先生に大変厳しいところがありましたが、私は、気に入った代行の先生には「先生、また来てね」と言うことにしていました。そうやって知り合った代行の先生には、後日、別のスタジオで教えていただくこともありました。

でも今になると、ルシーニュ先生にとってはお姐様方のほうが「ルシーニュ先生とどこまでも♡」感があって可愛い気があったのかもしれません。

 

代行の先生もMバレエ団付属バレエ学校の教師資格を持っている方ばかりで、「教えのプロ」でした。なかには「お疲れのところ、すいませんねぇ」と言いたくなるような先生もいらっしゃいましたが、ご自身のお教室で教えるように丁寧に教えてくださる先生が殆どでした。おそらく自分もその先生のお教室で習っていれば、その先生を最高の教師として崇めたに違いない…と感じることもありましたが、代行の先生だとやっぱり何か、足りないんですね。

 

今考えると、ルシーニュ先生と私たち生徒の間に見えない絆ができていたのかもしれません。チケット制で毎回生徒が変わるとしても、レッスン毎に、ルシーニュ先生を中心にした絵を、皆で描いていたのです。その絵はいつも完璧だったので、代行の先生が真ん中に入ってくると、特に先生のすぐ周りの部分を構成していたお姐様方は、いつものように描くことができず、葛藤を先生にぶつけていたのではないでしょうか。

 

スタジオのあり方やシステムは時代とともに変わっています。

いまや有名バレエ団の新進気鋭のソリストが、週5クラスも担当することなどないでしょう。

携帯電話、メール、SNS、ネットも先生たちの代行を助けるツールです。

 

そして生徒たちも、同じツールを使って「先生とどこまでも♡」移動することができるのです。