第87話 スタジオ映え

今年の箱根駅伝は新記録が続々と出て、エキサイティングなレースとなりました。

令和に入ってヒトの運動能力が急速に進化した⁉︎…と思いきや、これがどうやらシューズのおかげのようで、今後のシューズ使用の可否が論争中です。

 

数年前にも、速く泳げる水着というものが登場しましたね。

記録がものを言う世界では、テクノロジーの進歩が人間の能力を引き出してくれるのです。

 

バレエでも、”履くだけで上手に踊れるポアント” や、”着けるだけでアンデオールになり膝が伸びるタイツ” など、誰か考案すればいいのに…と思うのですが、芸術の世界ではそれは邪道のようです。

“いつもの2倍回れるレオタード” があったら、私も重ね着したいところです。

 

そのような開発はなされませんが、バレエ・ウエアは進化しています。

 

私がバレエを始めたとき(くどいようですが、それほど昔ではないんですよ)、レオタードはナイロン製が主流で、光沢のあるものとないものがある程度。タイツもフィット感がイマイチでした。

 

私は服飾関係の仕事をしているわけでも、繊維に詳しいわけでもないのですが、ポリウレタンという素材が開発され、これが綿などの素材と組み合わさったことで、薄手で伸縮性に優れたオシャレなデザインが多く生み出されるようになったとのことです。

 

その後、ベロア風生地のレオタードの出現を皮切りに、様々な素材のレオタードが次から次へ出回るようになりました。デザインも、花柄あり、アニマル柄あり、パフスリーブあり、レースをあしらったものあり、透け感あるものあり…。花柄プリントのレオタードやらスカートやらで、スタジオが昭和の遊園地のフラワーショーのようになることもあります。

“膝が伸びるタイツ” はありませんが、最近のタイツは脚を美しく見せてくれます。

 

美しく機能的なバレエ・ウエアが豊富に出回っているのは、テクノロジーの進歩のおかげだけではない気がします。

バレエ人口が爆発的に増え、たくさんの人たちがバレエ・ウエアを着るようになり、多様なデザインのニーズが高まっているからです。

 

オシャレなレオタードを着たくてスタジオの門を叩く人もいるのではないでしょうか。

レオタードは街中では着れません。

自分の家で着るのは自由ですが、宅配便の方を驚かせることになるでしょう。レオタードを着て鍋をつついても楽しくありません(おツユがはねたら大変です!)。

 

レオタードが「バエる」のは、ダンススタジオだけなのです。