第4話 スタジオの窓

青山ヘルシィスタジオは、青山通り沿いのベルコモンズという、オシャレな造りのファッションビルの8階にあって、バレエに使っていた第2スタジオには、大きな窓が2つありました。

 

冬の朝、レッスン前にその窓から差し込むお日様の光は、ストレッチをする私たちをぽかぽか温めてくれました。

 

夜には、その窓からは青山通りの夜景が開け、レッスンの間に見入ったものでした。
はす向かいのビルにあったアイスクリーム屋さんは当時大流行で、店の外に長い行列ができることもありました。
向かいのビルには焼肉レストランがあって、何かの雑誌に、その焼肉レストランからの「眺めは最高」と書いてありました。その眺めとは我々のスタジオのことではないかと、検証に行ったこともあります。確かに、レオタード姿の女子を大きな窓を通して見ながらの焼肉は美味だったでしょう。

 

現在、都会のダンススタジオは地面の下が殆どです。地上にあっても、セキュリティ上の懸念もあるのか、外から見えなくなっています。つまり、外も見えなくなっています。
バレエのレッスンに眺望は不必要でしょう。確かに。
でも、バーレッスンをしながら青空が見えたり、グランワルツの順番を待つ間にカレー屋さんの前にできた行列をちらと見たりするのも、ちょっとした気分のリフレッシュになるものです。