第127話 人生は短し♬

先日、AEDダンススタジオのクラス動画を見ていたら、懐かしい人が隅っこに登場していました。彼女のことは忘れることができません。

 

ちょっとバレエの分かる人なら眉をひそめそうな踊り方ですが、彼女こそダンスの原点ではないかと、今になると思えてきます。

 

彼女のバレエは全く奇妙でした。

挙動も奇妙で、最初のうちはギョッとしたものです。

バレエのレッスンを受けるのに耳栓をし、その上からヘッドホンをしていたのですから。

さらにポアントが大好きなのは分かりましたが、ちゃんとした立ち方をしていないので見ていて危ないのです。

 

やがて、彼女は一種の発達障害ではないかと思うようになりました。

話をしたことはなかったのですが、おそらく子供の頃からやっていて、踊ることが好きで、ポアントが大好きで、自由に踊らせてくれるAEDに居場所を見出したのではないかと思うのです。

 

ダンスは「周りを真似する」ことから始まります。

私が始めた頃は、現在のように初心者クラスというのはなかったので、なんとなく真似して、なんとなくできたような気分になって、なんとなく楽しい…のが普通でした。

そのためか、青山ヘルシィスタジオでバレエを始めた人たちは、その後すごく長い間バレエが好きで、今でもあちこちで姿を見かけることがあります。

 

でも最近の大人バレエでは、初心者クラスが用意されているのは羨ましい限りなのですが、基礎を「しっかり学ぶ」ことに終始してしまって、本当に楽しいのだろうか?…と思うことさえあります。

 

もちろん正しいフォームを身につけることは大切です。

冒頭に書いた彼女のような踊り方をしていると怪我をする確率は高いですし、長く踊ることができないかもしれません。でも彼女は心から踊りを楽しんでいたと思うのです。

 

一方、正しい形に固執するあまり、傍目には踊れているのに殻が破れなかったり、上手(に見える)人の前で萎縮してしまったり、中には他人の批判ばかりしてしまって結果的に自分を縛ることになっている人もいます。

 

他のダンスでもある程度そういうことはありますが、バレエほどに基本形を重視することはない気がします。

何度かジャズダンスの公演を見に行ったことがありますが、ジャズの舞台ではみなさん(老いも若きも)弾けるように踊っていて本当に楽しそうでした。

 

楽しいかどうかは本人次第で、顔の表情に全て表れるわけではないので何とも言えませんが、せっかくワクワク始めたバレエが、「やっぱり難しくて無理」に終わってしまうのは、バレエ大好きの私にとって不本意です。

 

その一方で、アドバイスのないクラスを受け続けて自己流になってしまった方も気の毒だと思います。

まあそこは誠に勝手ながら、先生の経験におまかせして、楽しさを落とさずに、きちんとしたバレエを教えてください…としか言えないのですが🙇‍♀️

 

また、以前にも触れましたが、バレエ好きな人たちには特に、真面目な人が多い気がします。

基礎を教えてもらった先生やスタジオから(一生)抜けられなくなってしまった人をたくさん知っています。そういう人たちは、何かの都合で先生のレッスンに通えなくなると、バレエ自体を止めることになってしまって、なんとも残念です。

 

また、過去にいただいたアドバイスを思い出しながらレッスンを受けているという人もいました。

でも私は、踊るときはなるべく「今」のことだけを考えるようにしています。

「今」を楽しむのがダンスの目指すところではないかと思うからです。

 

人生は短いです。皆さん、バレエをなるべく楽しんでくださいね。