第95話  飛行機の重心

青山ヘルシィスタジオに、子供の頃、本格的にバレエに取り組んだ人が来ていました。

受験でバレエを休止し、大学を卒業し、就職してから、『趣味』としてバレエを再開したようですが、

「久しぶりにポアント履いたら、重心が変わっていて、怖くて、怖くて」と言っていました。

大人になってから始めると、そういう経験がないのはラッキーですが、重心を体感できないのは残念な気もします。体重の増減は実感できますが、重心が変わるほどには…。

 

我々が重心を体感するのは、起きている人間を背負うときは軽いけれど、眠ると重くなるという現象です。死体も重くなるそうですね。運んだことはないですが。

 

重心とは、「そこを支えると全体を支えることができる点」で、大人ではおへその少し下にあるそうです。

 

一説によりますと、ダンサーが高ーくジャンプしているとき、重心は身体の外、下方にあるそうです。不思議です。

どうやって調べたのか、それも謎です。

飛んでいる飛行機の重心も、外にあるのでしょうか⁉︎ 

そう考えると飛行機に乗るのも怖くなります。飛行機の飛ぶ下に住むの、超怖いです。

 

さて、子供は大人より重心の位置が高いだけでなく、頭を使わずに重心の位置を自在に操れるような気がします。年をとるほど、重心の位置を移し変えるのが難しくなり、頭で考えてしまって、なおさら難しくなるのではないでしょうか。形は分かっているのに上手く踊れなかったり、鏡に映る姿が先生と全然違ってしまうのは、そのせいではないかと思うのです。

 

ポアントで立って踊るには、重心移動も含めて動物的なカンが必要ではないかと思います。

バレエの先生は大抵が、子供の頃からレッスンをされています。8、9歳~12、3歳くらいにポアントを初体験されているのではないかと思うので、ポアントを履くのに頭を使うことはなかったはずです。

なので、「先生はどうやってトゥシューズを履いて踊れるようになったのですか?」と尋ねれば、「気がついたら踊れていた」と答えられるでしょう。

 

前回の「社長さん」は “オッサン” だったので、自分ではポアントを履いて踊ったことはなかったはずです。知っている人から履き方を聞いて、理論として確立されたのでしょう。だから大人から始めた私に、履き方を伝授してくれることができたのではないか…と思います。

 

是非、社長さんのような方に「大人ポアント初心者クラス」の講師をしてもらいたいところですね。