第43話 注意一秒、ケガ一生

水曜日の朝、起きたら右足の親指が腫れあがっていました。
痛風を疑うような症状でしたが、私の尿酸値は3以下。私が痛風になったら日本人の約9割が痛風になってしまいます。インドメタシン軟膏を塗って様子を見ました。

夕方になり、腫れはよくなるどころか、足全体が熱を持ち始め、歩くのも苦痛になってきました。
よく観察すると、皮膚の深いところが炎症をおこしているようでしたので、翌日、皮膚科に駆け込み、抗生物質の飲み薬と塗り薬をもらってきました。「運動は控えてね」と言われるまでもなく、動く気にもなれず、保冷材で冷やして安静にしていました。

さすがmagic bullet(魔法の弾丸)、抗生物質!! 今朝起きると、腫れは大分ひいてきました。今週末はモンターニュ先生に「月よみ」をしてもらう約束があるので、歩けなくなったら困るなぁ~と心配していたのですが、この分だと大丈夫そうです。

それにしても、どうしてこんなことになったのか、まったく不明です。
患部の周囲にバイ菌の侵入口などなく、力が加わった記憶もないのです。
夢の中でポアント履いて踊った―覚えもありません。

病気や怪我は、いくら注意していてもある日突然降ってきます。
駅前で配っているティッシュのように、目に見えない疫病神が「疾病チケット」を(強引に)配っているんじゃないかと思うくらいです。

レッスン中の怪我は、私も経験がありますが、本当、怖いです。
ほんの一瞬の注意力の欠如で、その後数か月、レッスンができなくなってしまうのです。もとのように踊れなくなってしまう人もいます。
怪我をする5秒前に時計の針を戻せたら…と、誰もが思います。

もう何年も前の話ですが、AEDダンススタジオのレッスン中にアキレス腱を切った人を目の当たりにしたことがあります。
ショックは自分の怪我よりも強く、しばらく「グランワルツ恐怖症」になってしまいました。今もそうですが、何事もなくレッスンを終えると心からホッとします。

怪我をすると本人も、スタジオの人も動転して「119」を押してしまったりします。
救急隊は駆けつけると、まず身元と症状の確認をします。
クラスを一緒に受けていた皆さんの前で、名前と年齢を訊くのです。
見栄を張って「20歳です」などと答えると、頭を打ったのかと思われて違う病院に運ばれてしまうこともあるので、正直に答えなければなりません。悪いことに、周りの皆さんは、名前は忘れてしまっても年齢だけ覚えていて、「この前、〇歳の人が怪我をしたのよ」と、噂が万里を駆け抜けてしまうのです。
「風邪をひいています」と言うと遠くの病院に運ばれることもあります。感染症の可能性のある患者は受け付けない救急病院もあるのです。

バレエで負う怪我は、"世間一般の標準からすると軽傷" が殆どです。
スタジオの人に氷をもらって冷やしながら(なるべく自宅に近い)病院を検索し、自力で帰ったほうが、後々自分のためにもなります。
不安定な歩き方をしたり、(骨にヒビが入るなどで)血圧が下がった状態で電車に乗るのは危ないので、ここは奮発してタクシーに乗ったほうがいいでしょう。

注意して避けることができるものでもないのですが、くれぐれも注意して長く、楽しく、踊ってくださいね。