第78話 インフェクション 2

麻疹やおたふく風邪は大人になってからかかると重症化しやすいと言われています。

ダンス熱も同じようです。

 

と言うより、子供の頃からやっていると、親や先生の監視下なので感染がコントロールされ得るのでしょう。でも大人の場合は、止めてくれる人がいないため抑制がきかなくなるのです。仮に止めてくれる人がいても、声が聞こえなくなってしまうのです。

 

もっとレッスンを受けたいからと、せっかく受かった優良企業を辞めてしまった人は、私が知っているだけでも相当います。

仕事のリタイア後、または「子供の手がかからなくなった」方々も重症化リスク大です。

 

この感染症パンデミックの温床となっているのが、ダンススタジオです。レッスンを受けるほどお得になる料金システムや、ポイント制度、プレゼント・キャンペーンを用意してダンス熱ウイルスを増幅させます。青山ヘルシィスタジオでは、お誕生日になると「レッスン1回無料ハガキ」が送られてきました。今ではよくあるこのシステム、考案者はおそらくヒラリーです。

 

発表会など、スポットライトの照射も重大な助長要因です。軽症だった人も重症化し、進行すると「ステージ・ホリック(holic=中毒)」症状を呈します。あちこち発表会を渡り歩き、それでも足りない人のためには大人向けコンクールという手段も用意されているようです。

 

通常の感染では抗体ができることで治りますが、ダンス熱抗体というものは産生されません。つまり自然治癒はほぼあり得ないのです。

 

だからといって治療薬を開発しようとしてはいけません。この難治性の感染症のおかげで日本の社会は随分助かっているのです。

日本国民のダンス熱が全て冷めてしまったら、日本の経済はバブルが弾けたときより大きく落ち込み、今度は鬱病生活習慣病が蔓延することでしょう。