第103話 デパートで踊ろう

今、スタジオ以外で行きたいのはデパートです。

新しいもの、きれいなものを見ながら、ただぶらぶらしたいのです。

そして、揚げたてのエビフライを食べて、フルーツジュースを飲んでジェラートを味わいたいです。美味しいケーキでもいいですね。マスクを取って、いろいろな種類のオリーブや、旬の塩ラッキョの試食もしたいところです。

 

デパートは、私にとって、落ち込んだ気分を上げてくれる “パワースポット” です。

昭和時代、デパートは家族が休日を過ごすエンターテイメント広場でした。屋上には遊園地や動物園があって、その下には大食堂、そしておもちゃ売り場。家電も家具も食器もペットも、何でも売っていました。マンションも売ってました。リカちゃん人形のマンションでしたが。

おそらく、わたし世代の人たちはデパートと聞くと、今の子たちがディズニーランドと聞くのと同じくらいワクワクするのではないかと思います。

 

幼稚園に上がる前、デパートでは小さい子供向けのイベントも頻繁に催され、連れて行ってもらった記憶があります。

幼稚園では、デパートに「遠足」に行った思い出があります。近所のデパートでしたが、屋上遊園地を貸し切りにしてもらって、乗り物乗り放題。メリーゴーランドもありました。お昼に解散して、みんなで大食堂でお子様ランチを食べました。

遠足は公園や動物園にも行ったはずなのに、デパート遠足だけが記憶に鮮やかによみがえってきます。

 

昭和も末期になると、小さな子供の数が減ってきて、屋上遊園地はビアガーデンやゴルフスクールとなり、上層階は催物場やカルチャースクールとなりました。

初期のカルチャースクールは、(言葉は悪いですが事実)ババくさいものばかり教えられていましたが、私たちがOLと呼ばれる時代になると、語学や手芸、楽器、そしてダンス…どんどん新しいジャンルが増えていきました。

 

デパートのカルチャースクールのバレエクラスを受けたこともあります。大人バレエが最初に盛んになったのは、カルチャースクールだったのです。

思いのほか床もよく、シャワーもありました。

カルチャースクールは、たいていが3ヶ月で一学期。継続する生徒が一定数集まらないと次の学期が開講されないので、先生もあれこれ工夫を凝らしてレベルも高く、発表会が開かれることもあります。

 

私が行ったカルチャーでは、先生がちょっと名が知れていたこともあり、どこかのバレエ団の団員さんも来ていました。月に一度、ポアントもありました。カルチャーのバレエとはこんなに有意義なのか…とつくづく感じた3ヶ月でした。

 

デパートのカルチャーのいいところは、同じ屋根の下に楽しみが詰まっていることです。

私は、毎週、地下でジェラートを食べるのが楽しみでした。

今でもカルチャーでジャズダンスを習っている友人がいますが、彼女は毎週、地下で「爆買いしちゃう」と言っていました(コロナ以前の話です)。最近ではデパートで優待を受けられたり、ポイントカードを発行されたり。おまけに受講料でポイントが結構貯まるのです。

 

現在、デパートは、食料品売り場だけ営業中です。

近くのスーパーよりすいているので、私も足をのばします。

でも、他の売り場がお休みなのでいつもの入口から入れなかったり、一部のお店はやっていなかったり、いつもより品数が少なかったり…、スカスカの陳列棚を見るとかえって悲しくなってしまいます。梅干しとか、柿の種くらい売ってくれてもいいのに。。。

 

地下に降りて行くときに、ひと気のない売り場が見えると「ああ、”戦争中” なんだ」と思わざるを得ません。

 

そのような中で、感染リスクと隣り合わせていながら、いつもと同じ笑顔で応対してくれる店員さんには、ひたすら頭が下がります。

売り場が元どおりになったら、デパートでいっぱい買い物をしよう!…と思います。早く実現する日が来ますように。