第81話 「趣味」は良くないです

今、やろうとしている翻訳は、言葉の印象を大切にします。人によって受け取る感情が異なるような言葉はNGです。言葉の意味は辞書に載っていますが、受け手の感情までは載っていないので、英語圏に生まれ、育っていない私にとっては、そこがハードルです。

 

例えば、日本語の「趣味」という言葉です。

良いも悪いもありません。私も普通に使っています。広辞苑に載っている意味も、悪いものではありません。

でも、この言葉が「バレエクラス」と一緒に使われると、私には心地よく響かないのですが、皆さんは如何ですか?

 

確かにバレエは「趣味」です。自分でも「趣味」欄に「バレエ」と書くこともあります。

それなのに、「趣味クラス」と称するクラスには抵抗があるのです。

何クラスであろうと先生は熱心に教えてくださるでしょう。でも「趣味クラス」という表札がつくことで、「(所詮)趣味なんでしょ?」というスタジオの姿勢が見え隠れしてくる気がするのです。

 

それだけではなく、私は、「趣味」というと園芸や手芸、モノの収集など、静的で長閑なものを連想します。でもダンスのレッスンは私にとって長閑とは程遠いもの。どうも組合せが良くない気がするのです。

 

面倒くさい?

「所詮」「趣味」なんですけどね。

でも「私、所詮、趣味ですから」など思いながらレッスンを受けている人はいないわけで…。

 

最近では、「趣味」+「バレエクラス」は減った気がします。

私の思いが通じた…というより、趣味でない方々もどうぞ…というのでしょうね。「大人のクラス」「大人のバレエ」という言い方が一般的なようですが、ちょっと無味乾燥に響きます。

 

言葉は現代の魔法…ではないかと思います。

言葉の使い方ひとつで、世間にスルーされていたことが注目を集めることもあるのです。「インスタ映え」ならぬ「言葉映え」?

 

今年も、新語・流行語大賞が発表されました。

「大人バレエ」にもそろそろ誰か、素敵な愛称を考えて、来年の新語・流行語大賞を狙ってみては?