第80話 魔法の言葉

AEDダンススタジオのバレエクラスでは、私を参照して踊る人はいません。

でも、私と同世代の方ばかりの(~初級)クラスに出ると、私が「震源地」になっているらしきことが度々あります。女子校育ちのオーラが、女子の皆さんの視線を引きつけてしまうのかもしれません(?)。

 

センターでも、「一緒にやりましょう」と寄り添われることもありますが、危険ですっ!

方向音痴の私。ピルエットやグランワルツで、左のとき、気がつくと(左を向いて)右をやっていることもあります。逆走することもあります!

私と「一緒に踊りたい」方は、一緒に逆走する覚悟でお願いします。

 

冗談はさておき、思い返すと、私も最初は他人の後ばかりついていました(第6話あたり)。

慣れてきてからも、自信のありそうな人をマークしてばかりいました。自分で覚えたものより他人のほうが正しく見えてしまうのです。

 

そんな私に喝を入れてくれたのが、ルシーニュ先生の一言でした。

「もっと自分を信じなさい」

先生の言葉は、たとえ先生が覚えていないほど些細な一言でも、生徒に対して魔力を持っているようです。

その言葉を聞いてから、私は自由を感じることができるようになりました。

自分の思う通りに踊っていいんだ…と。

さすがに自分が間違っている空気を感じると他人を参考に修正しますが(当然ですね)、合っていると思ったときは我を通します(先生が「違うっ!」と怒鳴っていることがあります(笑))。

 

バレエのクラスでは、先生が作ってくださった順番を覚えて踊るのが前提です。でも間違ってしまったとして、それは “すごく” 悪いことではないと思うのです。他人の迷惑にならなければ…ですが。

逆に、順番にこだわりすぎて音楽と合っていなかったり、つま先や膝が伸びないなど、大切なことをおざなりにしてしまうほうが残念だと思うのです。

何より90分間、ずうっと順番に縛られていたら、楽しむべき時間がもったいないですよね。

 

踊りながら他人を見るのはほんの参考程度に。

スタジオでは自分を信じて楽しみましょう。