第107話 一曲目

私がバレエを始めたとき、青山ヘルシィスタジオでは(なんと)リール・テープのバレエ音楽を使っていました。

当時すでに見かけることの少なくなっていたリール・テープを先生が持って入ってこられたのを見て、今までと違う世界が展開しそうな予感がしました。

 

そのリール・テープ一曲目のプリエのメロディーを、私はまだ覚えています。

そのとき初めて耳にしたその曲はとってもエレガントで、その後1回だけ、どこかのカフェで流れてきたことがありました。

 

レッスンが始まって最初に聞こえてくる音楽は、後々まで記憶に残るものです。

面白いことに、その音楽をよく使っていた先生の声まで聞こえてくるような気もします。

 

一曲目をよく覚えているのは、レッスンが始まるワクワクした感情を伴うからだけではないと思います。

 

どのレッスン音楽でも一曲目は特にきれいな曲が選ばれている気がします。現実の世界からバレエの世界に引き込んでくれる…一曲目は、そんな役割を果たすため、ロマンチックなメロディーが多いのかもしれません。

 

そして、一曲目がプリエのための音楽であれ、ストレッチであれ、心臓の鼓動とほぼ同じテンポで流れるような曲が多く、日常生活の雑念だらけになっている身体を、隅々からレッスンに集中させてくれるのです。

 

家でバーレッスンを一人でやっていたとき、レッスン音楽はネットなどで聞くこともできましたが、私は、過去にレッスンで使われた曲を頭の中で再生させていました。これなら長さも速度も思いのままです。

 

そして、先週、ついに生レッスンを受けることができたのですが、ピアニストさんが入ってきたときは驚きました。ピアノ生演奏付きだったのです。

何という贅沢❗️

断食明けに三ツ星フレンチを味わってしまったみたいな❣️

 

実は、感極まって何の曲か覚えていないのですが、久しぶりに美しい音楽に自分の身体を同調させる喜びを感じました。おそらく他の皆さんも、マスクの奥で同じような感激を噛みしめていたのではないでしょうか。

 

でも、次のタンジュで足がつってしまったので、感激は長くは続かなかったのですが(トホホ)。

 

ともあれ、もうお休みは嫌ですね。

オンラインもそれなりに楽しかったですが、音楽もレッスンもナマの味わいは格別です。

いつまでもこの喜びが続きますように。