第71話 赤の女王vs名探偵ポアロ

AEDダンススタジオのショーケースが終わると、感想が更衣室を飛び交います。

 

今年のはストーリー性があってよかった…とか、

〇〇先生、素敵だった…とか、

今年はファンク系が少なかった…とか、

タップ、やってみたいね…とか、

もっとフツーのジャズダンスが見たい…など。

 

私が始めた頃のジャズダンスと言えば、「フツーのジャズダンス」しかなかったのですが、今はジャズダンスと言っても、HIPHOPあり、コンテンポラリーダンスあり、シアターダンスあり、リリカル系あり、踊っても、見ても、全く違うものに分かれるのです。

 

同じ先生が、週替わりや月替わりでファンク系をやったり「フツーのジャズダンス」をやったりすることもありますが、最初からコンテとかリリカルとかジャンル分けされていることもあります。最近ではテーマパークダンスやヒールダンスなどもあるようです。

さらに、「〇〇先生のクラスにいつも出ている△△先生」の代行でも、〇〇先生とはテイストがまるっきり違うこともあります。

なので、AEDにン十年通っていて、何でも踊れそうな人でも、初めての先生のクラスに出るときには情報収集をしていたりします。

 

先生のスタイルも時代と共に変わっています。変わらなければ振り付けなどの仕事もできないのでしょう。音楽も新しいものを取り入れなければなりません。

ジャズの先生って「不思議の国のアリス」の赤の女王のようです。

同じところに留まるためには、全力疾走を続けなければならないのです。

 

これに比べると、バレエってシンプル♡

 

流派はあります。チケッティとワガノワでは違います。

先生によって、足の上げ方や、手の使い方が違うこともあります。

でも、ある流派のレッスンを受けていた人が他の流派の先生のレッスンに出て、目がテンになることはあっても、棒立ちになることはないでしょう。バレエのスタジオや先生を変えるとき、流派は参考にはなっても、決め手になることは少ないと思います。

 

ということで、私のように不器用な人間でも、おそらくタイムマシンに乗って過去に行っても、未来に行っても、レッスンを楽しめることでしょう。

 

レッスン音楽も、バレエやオペラやミュージカルからとった曲など、どこかで聞いたことのある音楽が中心ですし、舞台も、新しい解釈や斬新な設定の作品が時折上演されるものの、人気があるのはオーソドックスな定番です。

 

それはまるで「名探偵ポアロ」のよう?

どんな事件でも、どんなことが起こっても、必ず、最後から約30ページのところで事件関係者を一堂に集め、最後から約10ページのところで犯人を暴き出す。犯人を間違えることは決してないので、安心して読み進めることができるのです。

 

人間というものは新しいものを求める一方で、同じではないと落ち着かないところもあるのです。