第15話 人間のDNA

人間って、たくさんいる中から自分に近い世代の人を選び出してツルむところがありますね。
バレエ年齢が上がりつつあるおかげで、私の周りには同世代の人が常にいて、私の人生経験を豊かにしてくれます。

最近、初級クラスで知り合って、まだお名前さえ知らない方がいます。
たまたま家がご近所で、電車の中などでお話をするのですが、彼女は、人生にゆとりができてからバレエを始められた様子です。
最初はカルチャースクールで初心者向けのクラスを受け、とても楽しかったそうですが、もっと踊れるようになりたいと自らスタジオを検索し、現在、最初の教室とは違うスタジオ2カ所に通っているとか。

おっとりした方で、そうそう、ブログ第1話のプラチナ・バレリーナに雰囲気がそっくりです。髪の毛は黒いですが。
そのままビギナーズ・クラスでのんびり楽しむという選択肢もありながら、敢えて困難に身をさらし、自分を伸ばそうとする熱心さに心を打たれました。
そして、思いました。
人間は何歳になっても"成長したい" 生き物なのだと。

彼女が特別というわけではありません。
大人からバレエを始めた人たちは、皆、ひたむきです。
種から芽を出したばかりの植物が、上に伸びよう、伸びようとするのと同じエネルギーを感じます。
もう歳だから上手にならなくていい―なんて言う人に会ったことはありません。
あと何年できるか分からないから―そう言いながら、がんばっている人がたくさんいます。
スタジオを移るようなアクションをとらない人でも、レッスン後、本日のアンシェヌマンの復習に余念がなかったりします。

一方、そんな大人のひたむきさは理解され難いのか、
上のクラスに挑戦する者に眉をひそめる先生に、かつて遭遇したことがあります。
でもね、せんせ、それはヒトのDNAのせいでもあるのですよ。
難しいクラスに挑戦したいのは、人間が "成長したい" 生き物だからだと思うのです。
人間が先に進まない動物だったら、ヒトはまだ石器を使っていて、バレエも未だ発明されていなかったかも。
"成長したい" 気持ちを摘み取ってしまったら、世界はその瞬間、止まってしまいます。