第19話 北国の白鳥

今回は、私の人生を変えた舞台の話です。

青山ヘルシィスタジオに入会した後、共通チケットのおかげでエアロビクスやジャズダンスを経験しましたが、いまひとつ「!」という感触が得られず、クラシックバレエのクラスも試してみました。入りにくかったのですが、やってみると案外楽しかったのです。
だからと言って、バレエ一本にしぼる勇気もありませんでした。

その頃、Mバレエ団の「白鳥の湖」の公演のチラシをいただきました。
主役のところに、ルシーニュ先生(仮名)の名前がありました。
でも、恥ずかしがり屋の私、先生に直接「行きます!」と言えず、当日券で観に行きました。

白鳥の湖」は、子供の頃、テレビで見たことがありました。
でも、こんなにきれいなものだと思いませんでした。
第2幕、オデットが王子と踊るパドドゥには、背筋がゾクゾクしました。舞台を観てこんな感覚におそわれたのは初めてでした。異次元に迷い込んでしまったような美しさでした。
この後、数多「白鳥」を観ましたが、ルシーニュ先生ほど儚い白鳥を見たことはありません。
プログラムには「北国の白鳥」として、先生が紹介されていました。

この舞台を観て、「私もプリマバレリーナになる!」と、子供だったら思うのでしょうが、アラサーの私がそう思うことはなく、でも、これ以降、青山ヘルシィスタジオではエアロビクスやジャズのクラスに出ることはありませんでした。

シーニュ先生の周りは取巻きが厚く、名前と顔を覚えていただくまで長い年月がかかりました。
でも、一旦、覚えていただいた後は、短い間でしたが、大切なことをみっちりと教えていただきました。おかげで、この年まで楽しく踊らせていただいています。

先生は数年前、引退されて故郷に戻られ、本当に「北国の白鳥」となられました。
ときどき「渡り」はするようですが、先生の翼は儚いので金属製の翼を使われるようです。

人生を変えた、なんて大げさな!?―なんて言わないで。
あの舞台を観たから、今、バレエのブログが書けて、皆さんともお会いすることができたんです。