第20話 衣替え

日日是好日」という本を読みました。
樹木希林さんの最終作となった映画の原作です。
お茶を学ぶうちに季節の移ろいに五感が研ぎ澄まされていく様子が、洗練された美しい言葉でつづられていて、読み終わったとき、私までお茶を一服いただいたように、ほっこりしました。

特に茶道をやっていなくとも、日本人は季節の変化に敏感だと思います。
着物文化の名残というのか、私が少女の頃までは、6月1日と10月1日は「衣替え」の日で、全校一斉に、制服が夏服、冬服に切り替えられました。
体格のいい西洋人などは、北風が吹いていてもTシャツに短パン姿で街を歩いています。
日本人は、もしかしたら気候変動で日本が亜熱帯になってしまったとしても、暦にしたがって、または些細な風の向きや湿度を感じ取って服を替えるのではないでしょうか。

衣替え現象はスタジオでも起こります。

湿度がぐんと落ちた9月のある日、スタジオが黒や紺で埋め尽くされていたこと、ありませんか?
冷たい北風を感じた日、スタジオで暖色系のウエアが飛び跳ねていたこと、ありませんか?
梅雨の最中には、青や白のようなさわやかな色が主役になっていたりしませんか?

あるいは、いつもはバラバラな色の好みが、ミョーに揃っていたりすることってないですか?
久しぶりに身につけたレオタードの色が、周りの人たちと調和していて、まるで果物屋さんの店先に並んでいるブドウ―巨峰にピオーネ、レッドグローブ、ゴルビー、そして甲斐路―のようだったり。
それとも、もうすぐ解禁になるボージョレヌーボーのよう?

目に入ってくるものを自分流に表現するのも、ダンスを踊るのに必要なことかもしれません。

私は、ハロウインが終わったら、サンタ柄のTシャツをタンスの奥から取り出します。