第21話 人生のデザート

バレエにハマる人は多いですが、最初から「さあ、ハマるぞっ!」と言って始める人は少ない、はず。

最初の一歩は、「ちょっとやってみようかな」
子供や孫の踊る姿を見て始める人も、最近は少なくないようです。
週1回から始める人が多いでしょう。私もそうでした。
やがて週1回では満足できなくなってきます。上手になりたいのに、1週間も経つとまた振り出しに戻っていて、なかなか前に進めない。家で復習したいと思っても、あれ、今日、どんなのやったっけ? 思い出そうとしても、思い出せない。これじゃ、上手になる以前の問題だ―などと落ち込んだり。

私もアレグロアンシェヌマンをメモに書き留めて、会社の昼休みに一人、誰もいない部屋で踊っていたことがあります。友人の中には、区の施設を借りきって一人で自習した人もいます。
フラッシュダンス」、「Shall We ダンス?」、「リトル・ダンサー」・・・、ダンス映画には必ず、主人公が一人で踊るシーンがあるので、これは「ダンス熱中症」の初期症状かも。

でも、やっぱり一人ではさみしい。もう1回くらい行きたいっ!―と思って、どうにか時間を捻出します。たまたま家の近くにバレエ教室を見つけて、近くだったら往復を入れても2時間で行ける、週に2時間くらいならどうにか融通できないだろうか―などと策略を練ったり。

そうしてバレエにハマっていくのです。
アリがアリジゴクの穴にハマるように。
人間が沼にハマっていくように。

気がついたら仕事を辞めていた―なんていう人も私は知っています。親に仕送りしてもらいながら毎日何時間もレッスンに通って、ついに親が怒鳴り込んできた―なんて人や、生活費を切り詰めに切り詰めて栄養失調になっちゃった―なんて人も。

子供の場合は、週2回とか3回とか、決められてしまうこともありますが、大人にそんな枠組みはありません。体力と時間とお金が "許す限り" 踊ればいいと思います。
でも、あくまでバレエは人生に添えられた「デザート」にすぎないのです。メインディッシュである仕事や家族を、そして健康を犠牲にしてまで踊ってしまっては、本末転倒!?