第34話 スーツケースにバレエシューズを(2)

前回の続きです。

やっとやってきた週末、予め調べておいたダンススタジオのレッスン時間に間に合うよう、コーチ(大型)バスに乗ったのですが、出発約30分後、乗客は全員降ろされることになってしまいました。バスの故障でした。
前方の乗降扉がパタパタ開いたり閉ったり。椅子に腰かけている乗客がそこから落ちてしまうことはなさそうなので、そのまま走ってもいいのに、そうはいかなかったんですね。

中には、「これから結婚式に行く」ような恰好の人たちもいました。皆、それぞれにロンドンの週末を過ごす予定が入っているでしょうに、文句ひとつ言わず、表情も変えず、忍耐強く、代わりのバスを待っています。私は内心イライラしていたのですが、一緒になっておとなしく待ちました。

野ウサギが飛び回っていそうな草地の道端で30分ほど待っていると、代わりのバスが現れ、私たちをロンドンに運んでくれましたが、当初の予定時刻を1時間ほどオーバーし、レッスンは受けられませんでした。

空振りに終わり、代わりにどこへ行ったのか、しつこく翌日レッスンに再び行ったのか、全く記憶にないのですが、レッスンを受けた記憶はあるので、おそらく翌週あたりに行ったのではないかと思います。

さて、肝心のレッスン報告…なのですが、
プリエに始まってグランワルツに終わる…「日本と同じ」だったこと以外、何も覚えていません。

それよりなにより印象的だったのは、オックスフォードとロンドンの間にのどかな草地が広がっていたことです。手入れのされていない雑木林の他は何もない、だだっ広いだけの草地。
降ろされたのが昼間で何よりでした。雨の降る夜にあんなところで降ろされたら―。
ともあれ東京から1時間で行ける距離に、あんな場所はありません。

都会に近いのに、自然がいっぱい。急いでいるはずなのに、おおらか。
そんなイギリスに、惚れ込んでしまいました。
不味いと評判のイギリスの食事でしたが、ホームステイ先のおばあちゃんの手料理は、とっても美味。滞在中、ついに聞き取れなかったBBCのニュースですが心地よい響きのクイーンズ・イングリッシュに魅了され、すっかり「イギリスかぶれ」になってしまいました。

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オックスフォードからバスで20分ほどの地点。降ろされたのは、もうちょっと田舎っぽいところでした。(2018年12月16日撮影)

 

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オックスフォードで私が一番好きな場所、ブラックウェル書店。(2018年12月16日撮影)