第47話 シッティング・バレエ(1)

40代で翻訳業に転じ、最初の頃はいっぱいいっぱいでしたが、少しずつ時間を融通できるようになってくると、ヨガや和太鼓…肩こりに効きそうなものに手を伸ばしました。そして出会ったのが、AEDダンススタジオ、ボーシュバル先生のバー・アスティエでした。

ここでちょっと説明を・・・。
バー・アスティエというのは、フランス人の元ダンサー、アラン・アスティエ先生が発明した、床の上で行うボディ・ワークです。「バー」は「バーレッスン」のバーです。バーオソルという、床を利用して「バーレッスン」を行う(正確に言うとバーレッスンと同等の効果のある)エクササイズがありますが、それをさらに踊りに近づけたもので、バレエをやっている人も、やったことがない人も、老いも若きも誰もが楽しみながら筋肉を強化し、柔軟性を高めることができます。

AEDダンススタジオの土曜日の朝は人数が少なめです。最初のうちはみんなが初心者。床に座ったままだし、ラクチン!―と思ったはずなのに、メンバーが固定してくると強度・難度は "容赦なく" 上がっていき、気がつくと全然ラクチンではなくなっていたのです。

やがてボーシュバル先生は赤ちゃんができて交代されたため、私は別のスタジオに通うことになりましたが、そこではさらに難しいことをします。寝た態勢からあっという間に起き上がり、また横になる―とか。
身体の、ある一点だけで体を支えてポーズをとる―とか。

それもそのはず、「バー・アスティエ」の文字の順番を入れ替えると「アクロバット」になるのです―というのはウソですが、そのうち身体を空中に保ってポーズをとるようになるのではないかと思うくらい…。

座ったままあるいは寝たままなのに、「フッキン」や「ウデタテ」のような動きはなく、音楽に合わせて上半身を動かしているだけなのに充実感が得られて、私はどんどんバー・アスティエの魅力にハマっていきます。