第76話  インフェクション(infection)

バレエを始めてから2番目の職場では、バレエを習っていることを公表してみました。

「やってみませんか?」などと言った覚えは “全く” ないのですが、3児の母が興味を持ち、土曜日の夕方に子供達にご飯を食べさせている間にレッスンを受け始めたと言っていました。研修所で一緒だった人にもバレエ熱を移してしまい、彼女は私より熱心にレッスンに通っていました。

 

ダンス熱は感染性です。ヒトからヒトに空気感染します。多くの感染症同様、垂直(母子)感染も少なくありません。

垂直感染というのは従来「母→娘」ですが、最近では孫のレッスンに付き添っているうちに自分も…という人も珍しくないですし、大人になって始めた娘に勧められて…という人もいます。「娘がバレリーナ」だという方が、娘の教えるクラスに通っていることもあります。

 

ダンス熱の感染力は強力です。風邪同様、目の前の人がクシャミをしてもうつらない人もいますが、ガラスがあってもうつることが多々あります。

感染場所は、子供の場合は発表会や公演などの舞台が多いようですが、大人の場合は、普通の人たちの普段のレッスンを見て、または話を聞いて…ということが多いように思われます。

 

私が始めた頃、スタジオは窓の外から見えることが多く、自分と同じような人たちが踊る姿を(ときに向かい側のビルから)窓越しに見て入会する人は少なくありませんでした。

今では、第72話のように、フィットネスクラブ内のスタジオを仕切るガラス越しにクラスを見て、憧れ、始める人がいるように、「自分と同じような人たちがやっている」のを見るのが感染のきっかけのようです。

 

感染後でも、そのクラスに自分と同じくらいの年齢の人、同じくらいのレベル(自分の主観で)の人がいるというのが、感染継続の大きなモチベーションとなります。私も、そうやって多くの中高年の方々を安心させ、感染しやすくしているのかもしれません。

 

感染した人同士が接触すると、症状が重くなることもあります。

サブタイプは多数あります: バレエ熱、ジャズ熱、コンテ熱…etc. 1つ感染すると他にも感染しやすくなります。混合感染もあります。

 

死ぬまで治らないことも多いようですが、治らないほうが本人にはしあわせなことなので、放っておいてくださいね。

 

暑い、暑いと言っているうちに、今朝はすっかり冬の空気。

インフルエンザのインフェクションには、お気をつけください。