第84話 サピエンス  百を過ぎても  踊り忘れず

以前、スタジオで知り合った方からの年賀状に、「79歳になりました」と書いてありました。元気に踊っていらっしゃるとのこと。

確か彼女は60歳から始めたと思うので、バレエを始めて20年…ですね。

 

バレエ歴20年と言っても、20歳から初めて40歳、40歳から初めて60歳、60歳から80歳、80歳から100歳は、それぞれ20年の意味が違う印象があります。

 

私には未経験の領域ですが、70代・80代・90代は、20代・30代・40代…を結んだ点を単に延長したものではない気がします。悲しいことに、”年齢が進むとともにエイジング曲線の勾配が急になる” 感じがするのです。

 

エイジング曲線のファクターとは:

まず、”身体で覚える” 能力が下がります。

筋力も落ちます。毎日踊っていても容赦なく落ちるのです。筋力、体力が落ちると気力も落ちるでしょう。

そして一番怖いのが、健康を損なうリスクが上がることです。

 

ダンスに健康増進効果があるのは周知の事実ですが、ダンスは病気の免罪符ではないのです。

どうしても防ぐことができない病気というのは、あるのです。そして、そういう病気はレッスンの継続を妨げます。レッスンを休むと筋力の低下に加速度がつきます。

新年早々、気の滅入るお話でごめんなさい。でも、これは誰にでも訪れる未来、現実なのです。

 

40歳で踊る「努力」を1とすれば、60歳、80歳、100歳を超えて踊るにはその10倍、100倍、1000倍の努力、そして “奇跡” が必要なのかもしれないと思います。

 

それでもシニアと呼べる人たちは昨今、あちこちのスタジオで見かけます。彼女たちは進んで年齢を教えて(自慢して)くれます。

一昨年、72歳の方がポアントを履いて舞台で踊るのを拝見しました。大人になってからバレエを始めた方でした。最近では決して珍しい光景ではありません。

見かけも、話し方も若々しい方が多いので、年齢を聞いてびっくりすることもあります。

 

年齢を聞いて驚く私たちに、「好きだから」と彼女たちは笑い返します。

踊ることが彼女たちの元気の源、生きる支えになっていることも確かでしょう。

 

シニアの皆さんの頑張る姿が、我々アンダーシニアの、ひいてはスタジオ全体の活力になっていることも間違いありません。

 

皆さんが健康で、次の20年も、さらにその次の20年も、踊り続けることができますよう。